第28章 早く起きた朝は
そんな事を考えながら、穏やかな寝姿を引き続き眺めていると、彼は寝返りをし、彼女の方を向いて横向きで寝ていた所から、仰向けなった。
先程まではしっかりこちらを向いていたのに、彼の横顔しか見えなくなってしまい、少し寂しい。
椛(もうすっかり目が覚めてしまったし…
朝の準備、先に始めようかな。)
ベットを揺らさない様に、ゆっくりと静かに身体を起こす。
上半身を起こすと、再びベットに沈んでいる彼に目を向けた。
綺麗な寝顔に、少し乱れた髪。
そんな彼の姿を見ていると、思わず笑みが浮かび、充実感を覚える。
椛(本当にどこかの国の王子様みたいだな…
こんな人に恋人と言われて…
私は、一生分の運を、使い果たしてしまったのではないだろうか…)
ベットから出ようと体を起こしたのに、結局そのままの体制で、暫く彼を見続けている彼女。
無防備なその彼の姿に、釘付けになってしまった様だ。
椛(ヤバいな、本当にずっと見てられる…
キリがないな…
私、変態かな…
変態なのか…
いや、綺麗な寝顔で寝ている零が悪い!)
人間とは欲深なもので、ずっと見ているとやはりそれだけでは足りなくなってくる。
触れると起こしてしまうかもと思い、ずっと見つめるだけに留めておいたが…
先ほどから彼女の胸の中で、緩やかに積み重なっていく体の熱を、消化したい気持ちが募る。