第9章 芝浜離宮恩賜庭園
彼女はサッと車を降りると、扉をしめて、直ぐに車道から離れ、歩道に立ち、こちらに向かって手を振っていた。
流れが多いロータリーに、長い間は停車出来ない。
そう気を使ったんだろう。
彼女に手を振り返して車を発車させる。
バックミラーから、彼女が歩いて移動する様子を確認すると、一呼吸長く息を吹いた。
安室「ふぅ。」
先ほどは『このままの時間がもう少し続いて欲しい』と願ってしまったが、なんだか最後の彼女の笑顔を思い出すと、俄然『やる気』が湧いてきた。
安室(この国は俺が必ず守る。
先に逝ってしまった『大切な仲間達』、、、
あいつらの分も。
必ず。)
そうして彼は、もう一つの顔を額に宿し、まだ明るい街並みを颯爽と愛車で駆け抜けて行った。