第42章 ポアロのギタリスト
椛「そんな顔って…
どんな顔してるの、私……?」
問い終わるより早く、降谷の指先が椛の顎にそっと触れた。
軽く上を向かせるだけの、ほんの小さな動作。
なのに全身が熱に包まれる。
降谷「……俺のこと、欲しがってる顔…」
椛「……否定は出来ないかも……」
降谷の親指が椛の唇の端からなぞる様に、触れていく。
柔らかい唇はそっと指でなぞると、形を変えていく。
なんとも言えない官能的な、空気が2人を包んでいた。
降谷「椛…」
優しく名前を呼ばれた瞬間、唇をなぞる降谷の指に椛はチュっと吸い付いく。
降谷「もうキス、していい?」
許可なんて求める必要はないのに、あえて問うところが何とも憎らしい。
椛が返事を返そうと、唇をわずかに開いた瞬間…
降谷の息が椛の唇をかすめる。
声を出す代わりに、彼の背中に回す腕の力を強めて、もう待ちきれないと言わんばかりに顎を上げると…
先程から待ち焦がれ続けた彼の唇が、優しく重なった。
その夜の甘く熱い時間が、
ようやく静かに…
しかし確実に幕を開けた瞬間だった。