第39章 嘘つきと正義
安室「…先程店内だったので、言いそびれましたが…
僕だって椛さんに会いたかったですし…
それに…
貴方に出会う事が出来て…
僕は幸せ者ですよ。
今日、椛さんの顔が見れて…
本当に良かった。」
少年のような笑顔から、慈悲の帯びた大人の微笑みに変わる。
夕焼けの空に反射して、髪は輝き、瞳も光に反射して、ライトブルー色の筈の彼の瞳は普段より、若干紫がかって見えた。
一連の彼の行動と言葉。
その表情に目を奪われる。
そして姿も相まって、心臓がドクリと音を立て、身体が熱く疼き始める。
椛(この人…
何度、私を惚れさせたら気が済むのだろう…)
駐車場はすぐ近くなので、歩いてもそんな大した距離じゃ無いが、そんな距離でさえ手を繋ぎたがる彼が酷く愛おしい。
そのまま2人並んで歩き、駐車場に辿り着くと、安室は先に助手席の扉を開けて彼女を座らせる。
乗った事を確認すると、扉を閉めて、自身も運転席に回り込んで乗り込む。
先に乗り込んでいた椛はシートベルトを締めようと、手をかけていたが、後から運転席に乗り込んできた安室は、その彼女の手を掴んで止めた。
安室「椛…」
名前を呼ばれ振り向くと、彼の端正な顔がすぐ目の前にあり、そのまま早急に唇を重ねられた。
啄む様な甘いキスに、心が溶かされて力が抜ける。