第1章 SOTA
彼のダンスパフォーマンスを観ると、いつも興奮と感動が溢れて私を満たし、その後で必ず不安にかられる。
彼の目線は確実に世界に向いている。
住む世界が違いすぎる。
全世界が彼を見つける日はそう遠くないはずだ。
明日急に飛び出して行って、そのまま私のもとに帰ってこなくても全然不思議はない。
というか、そっちのほうがしっくりくる。
彼の所属するダンス&ボーカルグループのドームコンサート。
特等席を用意してくれるって言われて、メチャクチャはしゃいで、数か月前から楽しみにして、実際参戦中は気を失うかと思うくらい興奮MAXで燃え尽きて。
でも、去っていく客を眺め、出てくる彼を待っている間の今、完全に私は鬱モード。
通された楽屋のような部屋の扉が開くことはきっとないと思った瞬間、
「あーー燃え尽きたぜー」
大きな身振りで彼がやってきて、すぐさま私は幸福の絶頂に連れて行かれる。
ホントに私って単純。
ソウタはキラキラした瞳で本番中のエピソードを話してくれて、私も良かったシーンを全部語りたくなって次々会話が進行する。
その笑顔を見ただけで、もう悩んでたことなんてどうでもよくなる。好きがあふれる。