第3章 お前も一緒に来るか?
ゲームセンター近くのエリアだと、子供の出入りが多く、買い物客の声がより一層賑わっていた。
しかし國神はそんな騒がしさなど気にならず、目の前の彼女の言葉にのみ耳を貸していた。
「昨日話したけど…、私、物心つく前に母親がいなくて、父子家庭で育ったんだけど、父親にとっては同性の兄の面倒が見やすいのか、いつも私は、何か、蚊帳の外で……」
逸崎はハッとなり、意識を昔の自分から今の國神に変える。
「って、こんなこと、昨日会ったばかりの人に言うのはおかしいよね」
苦笑いを浮かべる。
せっかく誘ってもらったのに、空気を読めない上、さらには暗い話題を持ち込むなんて、身勝手だ。
せめてもっと明るい話題にしなきゃ。サッカー以外で何が……
「逸崎の親父さんと兄貴はサッカーやってて、それで逸崎も好きになったんだろ?」
「!」
逸崎が話題を出すまでもなく、國神が自ら出した。
「話を聞いてみるに、蚊帳の外に感じていたからこそ、家族の輪に馴染もうと、小さい頃からサッカーを必死に頑張ってたってとこか?」
「……」
そうやって確信を以って言える國神にも、幼少期似たような経験があった。
自分は小さい頃から体格が良く、周りから怖がられていて、中々友達ができず周囲と馴染めなかった。
だからこそ、共通の話題を見つけてみたり、友達の言葉を陰ながら真似してみたりと、努力もしたことがあった。
そんな中で両親の勧めでサッカーを始めたことで、同じくサッカーが好きな同級生と意気投合し、初めて心から思える友達ができた。
逸崎の場合は、友達ではなく家族という最も身近な繋がりであるが。