第3章 お前も一緒に来るか?
授業と授業の10分程度なら、クラスの誰かしらと軽く話はするが、長い昼休みに決まった誰かと長く話す姿は見かけない。
だから彼女の人柄をより知っている人はいなく、「物静か」「クール」「ミステリアス」だという印象がついた。
話しかければ愛想良く接してくれるが、自分から来ることは無く、独りでいることが多く、少し近寄りがたい雰囲気もある。
だから謎の転校生だと一部では言われているのだ。
「静かでクールな感じ?なイメージが強いけど、東京のこととか、本当はもっとおしゃべりしてみたいんだけどね〜」
「……」
國神は逸崎が過ぎ去っていった方向を眺めた。
(さっき急ぐように行っちまったのは、女子マネ達が近づいて来るのに気付いたから、空気を読んだのか……)
自分は部外者だからと気を遣って、急いでその場から身を引いた。
気遣われるのは好きじゃねえって言っていたくせに、自分は他人を気遣って離れるんだな。
(……いや、アイツは気遣っているというより)
「なあ國神、お前も一緒に来るだろ?」
「!」
國神はぼーっとしていたため、話を聞いておらず、聞き返した。
「部活早めに終わったから、皆でこれから遊びに行かね?って話してたんだよ。買いたいものだってあるし」
女子マネがサッカー部用のテーピングやスポドリの素などを部費で買い足しておきたいという話であった。
「1年の中じゃお前が一番なんだし、未来のエース様が一緒の方が盛り上がるだろ」
女子マネ達も「一緒に行こう」と次々に声を上げる。
國神は部活が終わった後はすぐに家に帰るか、そのまま自主練のためにグラウンドに行ってしまう事がほとんどで、皆もよく知っていた。
誘われた國神は悪い気分ではなく、そしてさらにそこに"あるスパイス"を加えようと試してみる。
「……もう1人、誘って良いか?」