第3章 お前も一緒に来るか?
國神の後ろの方面から走ってきて、國神の大きな体に小突くように冷やかす。
「なぁーに女子に迫っちゃって怖がらせてんの?欲求不満?」
「は?急に割り込んだ上何言ってんだ?」
「だってお前、小学校ん時から人一倍良い体格してんだから、相手との距離感は考えなきゃいけねえじゃん?遠近法だよ」
「本当に何言ってんだお前」
大きい物と小さい物は、対象物からの距離によって見方が錯覚するという事らしい。
気さくな話振りからして、小学生からの幼馴染であることには違いない。
國神とクラスメートのそんな会話を前に、逸崎は急な蚊帳の外でキョトンとしていた。
「とにかく、一緒に帰ろうかなーってお前探してたら、珍しく女子と話してるとこ見て……って、あれ?」
「?」
クラスメートは逸崎の顔を見た途端、表情を変える。
少し間が空いてから、声を上げる。
「あッ…!ミステリアスサッカープレイヤーガール!」
「!」
逸崎はその指摘に思わずびっくりして、國神の後ろに隠れてしまい、國神本人もびっくりする。
(!)
チームメイトはその光景を見て、笑い出してしまう。
「何だ。案外懐かれてんじゃん」
「いや逆にお前が怖がらせてんだろ」
國神は振り返ると、猫のように警戒する逸崎が隠れながら言う。
「ネーミングセンスもあれですけど、変なあだ名で呼ぶのはやめてほしいです……」
そして逸崎はようやく思い出す。
昨日サッカーの練習に誘ってきた気さくなサッカープレイボーイは、確かにこの人だと。
「まあまあ、一緒にサッカーした仲じゃねえか。てか國神。いつから逸崎さんと仲良くなったんだ?」
話を振られた國神は、背後で未だに隠れている逸崎の様子を伺う。
小さく首を横に振る仕草を見て察する。
「まあ……色々あったっつーか。あの後偶然会って、ちょっと話しただけだ」
あの後で試合相手の他校生に虐められたことを知れば、サッカーに誘った張本人がちょっとした罪悪感を抱くかもしれない。
トラブルがあった経緯で知り合ったことは伏せてくれ、逸崎はホッとする。