第3章 お前も一緒に来るか?
よく考えれば、菓子の賞味期限は2週間後だから、別に急いでいるわけでもねえし。
(もう帰っちまったなら、明日にすっか)
國神は渡しそびれてしまった菓子箱を見下ろしながら思う。
チョコ味や抹茶味など、色んなフレーバーが書かれており、バラエティ豊かで土産物としては気が利くものだ。
母親ながら、他人様への気遣いは良くできている。
(そういえばアイツって何味好きなんだ…?好きな食べ物とか……)
ピタッ
踵を返して教室に背を向けた瞬間、國神は足を止めた。
この時今更、昨日から感じていた彼女に対する
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ある違和感を思い出した。
きっかけは、バテてしまった逸崎を
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おんぶした時。
次は、雨の中、車道から歩道側に寄せるように、彼女の
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肩を抱いた時。
状況が状況であって、あまり気に留めてなかったが。
(ちょっと待てよ。よくよく考えたら、アイツ……)
「あの…誰かに用?」
「!」
その誰かである本人に横から声をかけられる。
「1日ぶりだね」
逸崎の姿は昨日のスポーツウェアから一変して、正堂の制服を着ていた。
スカートの姿は新鮮で、一方昨日と変わらず同じネックウォーマーを着けていた。
手元には本を2冊重ねて持ち歩いており、どうやら図書室から戻ってきたところらしい。
「ああ。お前に用があって来た。連絡するまでもねえと思って、昼休みにも来たんだが、タイミングが合わなくてな」
合流できて國神は内心ホッとする。
「あ、そうだったの。ごめん。転校したばかりだったから、校舎を見学がてら見て回っていたから、席を外していたんだと思う」
「いやいいんだ。俺が一方的に用があるだけで、謝んなくても」
そんな謙虚合戦の会話の中、逸崎の制服姿を目にして、國神の違和感は
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確信へと変わった。
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(やっぱコイツ……)