第3章 お前も一緒に来るか?
ガサッ
「?」
帰り支度でスポーツバッグに手を入れたら、触り慣れない感触があった。
取り出してみると、贈り物用で包装された洋菓子の入った箱だった。
(あ、そうだった…)
部室の部屋の時計を見上げると、時間は16時半を過ぎていた。
(……アイツ、まだ学校にいるか?)
部活を終えた國神は、校舎にまた戻ることにした。
1年生フロアの渡り廊下で、他生徒の流れに逆らいながら、逸崎のクラスへと向かっていく。
すれ違い様に同級生に声をかけられる度に軽く挨拶しながら、先へ進む。
手に持っている洋菓子の箱は、昨夜母親に待たされた物だ。
『車でわざわざ送ってもらったから、充ちゃんにちゃんと渡しなさいよ』
中身は秋田の名物の甘いお菓子で、色んな味が入った洋菓子だった。
東京から転校してきたのであれば、きっと物珍しいだろうからだと。
(休み時間か昼休みに会えたら渡すつもりだったけどな……)
國神は逸崎のクラスに2,3度は顔を出していたが、タイミングが悪いのか、彼女の姿が見えなく渡せなかった。
同じクラスの男子に思い当たる場所を聞いても、知らないと答える奴ばかりだった。
「ああ。あの謎の転校生か。ミステリアスガール?」
「何か全然喋るとこ見ないし。女子のようにグループ作ってわちゃわちゃしているわけでもねえし。クール系?」
「そうか?話しかけたら普通に会話してくれるし。ただ単に人見知りなだけじゃねえか?恥ずかしがり屋系?」
「転校してまだ1週間もしてねえから無理もねえんじゃねえか?鎖国を解禁したばかりの日本みたいな?新しい世界を知ったばかりの発展途上国系?みたいな」
と、自由気ままで訳のわからないアンケートばかりで、殆ど参考にならなかった。
(まあ俺も人のことは言えねえが、アイツは自分から積極的に人と接したり会話するタイプじゃなさそうだが)
ようやく教室に辿り着き、覗いてみたが、やはり彼女の姿は見当たらない。
(アイツ、まさか風邪こじらせたんじゃねぇよな?)
とは思いつつも、今日はちゃんと登校しているのは、クラスメートに確認済みだ。