第3章 お前も一緒に来るか?
正堂学院高等学校にて。
昨夜の豪雨からガラっと変わり、秋晴れのような清々しい天気になっていた。
しかし、グラウンドが水浸しのため、その日の体育の授業や野外の部活動は、体育館や学校内で筋トレ中心のメニューとなった。
サッカー部も例に漏れず。
強豪校となれば、体作りは並大抵の高校とは全く違うメニューであり、誰もがヒーヒーいうような筋トレを必死にこなしていた。
たった1人。國神だけは例外だった。
1年生の中で一番早く終わり、先に部室へ戻りに行く。
「まーた國神が一番乗りかい…」
「雨の日とその翌日は決まって最強じゃねえか!水タイプかよ」
「筋肉分けてくれよォ。それかレンタルしてくれ…!」
「いや筋肉をレンタルするってどーゆう世界線だよ?」
チームメイトに色々と言われながらも、嬉しさは顔で隠しきれなかった。
部室のドアを開けると、先に終わっていた2年の先輩が帰りの準備をしていた。
その先輩の体格は國神と良い勝負をするくらいの良さで、しかもレギュラーとして活躍するエースでもあった。
「お、今回も1年の中で1番か。さすがだな國神」
國神は一言「あざっす」と言う。
「お前ならこのまま頑張れば、
・・・・
2年には確実にレギュラー狙えるぜ。1年の中じゃ、お前が一番熱心だし上手いからな」
「……」
帰り支度する先輩のスポーツバッグの中で、参考書や塾の教材がチラッと見えた。
まだ9月中旬なのに、来年の受験の準備にしては早い気がするが、レギュラーを取れるくらいの熱心な性格なら納得もできる。
國神と入れ替わるように部室を出る。
「俺達が抜けた後も、サッカー部をよろしくな」
「うっす」
部室の扉を閉めて1人になり、國神は汗じみた身体をタオルで拭く。
「……」
手を止めた途端、さっきまであった嬉しさが悔しさへと裏返していく。
強豪校となれば、レギュラーになれるのは、1年生の時に下積みを積んできた2年生や3年生がほとんどだ。
だから現状で1年生でなっているのは誰もいない。
しかしそれでも、國神は正直焦っていた。
・・・・・・
(このままじゃダメなんだ。今の俺のままじゃ……)
悔しさで人知れず、タオルを握り締めていた。