第2章 また明日な
またスワイプして、今度は一番新しい現在のトークに戻る。
國神との初めてのやり取りを眺めていると、さらに言葉が送られる。
『また明日な』
「!」
一瞬驚いたが、返信を綴る。
『うん。おやすみなさい』
それだけ送ってスマホを切り、自分も1日のスイッチを切るようにして眠りにつく。
両脚がヒリヒリと痛む。筋肉痛が量産されているに違いない。
産まれたての子鹿のような足取りで、また会うのは嫌だけど。
でも、それ以上に、何か嬉しい。
「また明日…か」
逸崎は眠くなりながらも、頭と胸の中で國神に抱く想いが巡る。
どうしてそんなに優しくしてくれるの?
どうしてまた会ってくれるの?
どうしてそんなに、私のサッカーを肯定してくれるの?
誰にでも優しくできるヒーローだから?
それとも…まさか…ね……
肌寒い雨の中だったのに、いつの間にか心が優しさで埋まって温まり、久しぶりによく眠れる夜を過ごせた。
"以前のこと"は、まだ清算し切れていなくて、色々と中途半端で嫌な日々が続いていた。
でも少なくとも、今は違う。
明日が楽しみで、何だか気持ちが以前と違う。
すれ違うだけでも、少し挨拶を交わすだけでもいい。
それだけでも、國神くんを見ていると、何だか元気が貰えそうな気がする。
それくらいあの人はお人好しで、優しいヒーローだったから。
だから、また明日ね。