第2章 また明日な
國神宅にて。
國神は自室で筋トレをしていた。
それも何故かいつもよりハードな量をこなして、身体を鍛え上げていた。
今日は色んなことがあり過ぎた。
自主練しようかと思ったら、知らない女子がうちのチームに混じってサッカーしたり。
タチの悪い他校生に絡まれているその女子を助けたり。
生まれたての子鹿みたいに足が弱っているところをおんぶしたり。
急な豪雨に見舞われて、傘を半分こして送ったら自宅にお邪魔したり。
そして、LINEを交換したり……
國神は筋トレを一通り終えて一息つき、シャワーを浴びる前に携帯を確認する。
正堂サッカー部のLINEでは、明日の朝練の鍵当番の確認やらのやり取りが表記されている中、
その下の逸崎とのLINEトークは、アイコンと同じように空白のままでいた。
タップしてみても、彼女からの連絡は特に無く、真っ白のまま。
(って、何変な期待してんだ俺…)
ベッドの上にほっぽっといて、トレーニング後の風呂に入る。
湯船に入ってぼーっとしている間も、LINEの方が気がかりでいた。
「……」
湯船のお湯を手の平で軽く掬って顔に当て、天井を仰ぐ。
自分自身が確かに言った言葉を頭の中で反芻する。
『LINE…交換しねえか?』と。
(あん時は、勢いで言っちまった……)
何でかは自分でもよく分からねえ。
ただ、あのままアイツと別れたら、何つーか、同じ学校にいたとしても、もう喋れなくなりそうな気がしたっつーか。
もう、会えなくなる気がしたっつーか……
(いや女々しい過ぎんだろ俺…!!どこの少女漫画だよッ!)
恥ずかしさの勢いで、湯船に顔を突っ込みたくなるような衝動に駆られる。
姉や妹の漫画を借りることがあるため(無理矢理押し付けられると言った方が正しい)そんな比喩も思いついてしまう。
このままだとのぼせそうになるため、違うことを思い浮かべた。
夕方に観た逸崎のあのプレーだ。