第2章 また明日な
逸崎は動揺が隠しきれず、辿々しくなる。
「これでも叔母だから、可愛い姪の好みだって熟知しているつもりなのよ。充ちゃんは、
・・・・・・・・・・・・
ああいう人がタイプだって。行きの時に後部座席に座ったのも、國神くんの隣が良かったからでしょ〜?」
暖房をつけていないはずなのに、段々と暑くなっていく気がした。
否定しなきゃいけないのに、反論したいのに、うまく言葉が出ない。
でもそれくらい、もう、
・・・・・・・・・・・・・・
自分では分かってしまっていた。
沙織さんは逸崎の反応を楽しむように、ニヤニヤしながらダメ押しの指摘を繰り返す。
「充ちゃんは、サッカーとは全く別の話で、
・・・・・・・
そういうとこが、案外乙女なんだから。だから、國神くんに充ちゃんのことをもっと知って欲しいなーって。良かったじゃない…!LINEだって交換してもらって」
「う、うっせッ阿呆…!」
逸崎はようやく出せた声を残して、2階の部屋に籠りに走っていく。
沙織さんは面白がって笑いながら、再び仏壇の前に座り、姉の遺影に微笑みかける。
「お姉ちゃん…あの子は元気そうに、"ここ"(秋田)でやっていけそうだよ……」
逸崎に雰囲気がよく似た女性で、可愛らしい笑顔が特徴だった。
しかし、娘である彼女本人はここ数ヶ月、笑顔を見せなくなっていた。
それくらいに、"あの出来事"は本当に悲惨で、子供達が経験するには酷すぎた。
だからこそ、國神とLINEを交換したあの時に見せた逸崎の自然な微笑みは、闇夜を照らす一筋の光のように思えた。