第2章 また明日な
(サッカーやめて、家族がいた東京から出て離れたのに、結局私は中途半端なままだ……)
何の目的も無しに、毎日の夕方グラウンドで練習して、夢も目標も無いまま、形骸化した習慣を続けているだけ。
転校先の正堂学院にはようやく慣れてきて、基本的にいい人が多くて良かった。
中には良すぎる人もいたけど……
逸崎は頭の中で思い浮かばせる。
あのお人好しヒーローの__
「國神くん。かっこよかったわね」
「!」
逸崎は沙織さんの言葉に反応し、頬をついていた体勢が崩れる。
「今日はいい事があって良かったわね。きっといい男友達になるじゃん。異性の友達って案外良いのよ」
いつの間にか家に到着して、足元に気をつけながら車を出る。
2人で玄関に上がり、いつものように和室へ進む。
お仏壇の前で手を合わせて、遺影の写真を見上げる。
「もうお風呂は沸いているから先に入ってね。私は仕事してから、美味しく頂くからー」
在宅の仕事が残っているため、沙織さんは自室に戻ろうとするが、逸崎はその前に確認したいことがあった。
「……ねえ。何であんなこと聞いたの?」
沙織さんは首を傾げてピンとこない様子でいたが、逸崎にとっては重要なことだった。
百歩譲って、雨に降られたから家に上がらせるのはまだ良い。
初対面で急だったが、雨で寒い中玄関先で待ってもらうのも申し訳ないからだ。
しかし、
「私がサッカーしていたことに関して、國神くんは関係無いのに、どうしてあんな試すようなことを聞いたの?」
あんな事、初対面相手に聞くことではない。
『……ねえ。國神くんは、あの子のどこがいいと思ったの?』
『あの子、周りになんて言われようと、小さい頃からずっとサッカーしてきて……もちろん、好きなことをさせるのは、保護者として当然なんだけど、でも、心配で…』
ましては本人に許可なく過去のことを喋られたのは、あまり良い心地がしない。
理由を聞くと、沙織さんは悪びれもせず、含みを持たせた笑みを浮かべて、指先をクルクル回すようにしてズバリと言う。
「だって充ちゃん、國神くんの事、超どタイプでしょ?」
「!!?」