第2章 また明日な
QRコードを映し出すと、國神が被せるようにする。
「俺がスキャンするわ」
LINE交換あるあるで、自分から積極的にいく人はスキャンする側に回る。
國神がスキャンすると、名前が映し出された。
『逸崎 充』
アイコンは真っ白だった。
「ありがとな」
國神はスマホをしまったが、逸崎はずっと國神のプロフィール画面を見たままでいた。
そして口にする。
「……名前にもあるんだね」
「?」
「錬介の介。人を助けるって字でしょ?」
ドキッ
初めて名前を呼ばれて、國神は心臓音と共に感情が変わっていく。
逸崎もまた、心の内の何かが変わっていく。
心と体を鍛え上げ、その力で人を助ける。
鍛錬の「錬」と人助けの「介」
とんだお人好しヒーローの名前に、ピッタリだ。
そんなことが頭に思い浮かび、逸崎は自然とフッと笑顔を作ることができた。
「貴方らしい名前だね」
「!」
そして車は発進して、國神ファミリーはその背中を見送っていった。
雨はとっくに止んでいた。
「全く、出かけるんだったらちゃんとこれからは傘持っていきなさいよ」
國神母が言うと、姉が間に入る。
「いやいやいや。
・・・・・・
今回ばかりは、無くって絶対良かったと思うよ。だって……」
姉が指差した方では、國神は車が行った先をぼーっと眺めていた。
ふと自分のスマホを見下ろすと、逸崎のプロフィール画像を開いたままで、タップすると、トーク画面に映る。
そこにはまだ一文もなく始まりもないが、何か心躍る物があり、國神は無意識にフッと笑う。
「ねえねえ錬介〜。もしかして、
・・・・・・
始まった感じ?」
「!!?。な、何がだよ?」
國神は急いで元の調子に戻り、スマホをポケットにしまう。
「そりゃ青春よ!良さそうな友達できたじゃない?しかも女の子なんて」
姉に続いて妹も言う。
「筋肉とサッカーばかりじゃなくて、"そっち"も充実させないとねえ」
「うっせえ」
國神は「余計なお世話だ」と言いながらも、家の中へと戻っていく。
その頬は若干赤らんでいた。