第2章 また明日な
「充ちゃーん!そろそろ行くわよー!」
すでに運転席に座っていた沙織さんが声を上げる。
逸崎は國神ファミリーに向けて軽く会釈する。
「では、お邪魔しました」
背を向けて車に乗り込んでいき、皆んなで見送る。
「大人しそうな子だけど、その分、優しそうで運動めっちゃできそうだね」
國神姉は、逸崎の引き締まった体格や160cm超えの身長を見て言った。
「そういうとこも、アンタと似てるんじゃない?」
「……」
「錬介?」
姉が声をかけても、國神は無反応で、遠ざかっていく逸崎の背中をずっと眺めていた。
(おやぁ?これは、もしや……)
姉は國神弟の何かを察して口角を上げていた。
逸崎は助手席に乗り込むと、発進前に沙織さんが話し込む。
「國神さんのお母さん。とってもいい人だったわよ。さっき充ちゃんにね、夕食一緒にいかがって言われたけど、流石に急だから断っておいたわ」
「沙織さんもたまにはまともな人で良かったよ。それより早く出ないと道路の邪魔に」
コンコンッ
「?」
窓ガラスを叩く音がして振り返ると、國神が外からこちらを伺っていた。
逸崎はボタンを押して窓を開けた。
「どうしたの?」
國神は上着のポケットからスマホを取り出して、しばらくスワイプすると、画面にQRコードを映し出して、逸崎に見せる。
「LINE…交換しねえか?」
「へ?」
「はい!喜んで!!」
「いや沙織さんのことじゃない」
運転手の沙織さんが口を挟んで、すかさずツッコむ。
茶化すような視線を送られて、逸崎は内心呆れながらも、首を傾げる。
「どうして…?」
「友達なら別にいいだろ?ダメか?」
真っ直ぐすぎる眼差しから目を逸らし、少し考え込む。
「………いいよ」
逸崎はポケットから自分のスマホを取り出した。