第2章 また明日な
(思わず答えちゃった。私、今はサッカー全然やってないのにな……)
逸崎は無意識にネックウォーマーに触れる。
「そうなんだ!かっこいいね!女子サッカーって」
「え…」
國神のお姉さんは続けて言う。
「だって、男の子と女の子は体格が違うから、それぞれ戦い方とか試合の雰囲気が違って、それぞれの違いが全ッ然面白いっていうか!前、テレビで見たことあるけど、同じ女性なのに、すごいなーって思ったよ」
キラキラした眼差しで見つめられて、逸崎は思わず目を逸らして口元を隠す。
「そう……ですか…」
他人から褒められるのに慣れていないその仕草や、根は優しそうな穏やかな性格。
(何か"弟"(錬介)に心なしか似てるなー。類は友を呼ぶって感じかな?)
「お姉ちゃーん。私の靴下知らない?……って、女子?」
すると今度は、妹さんらしき女の子が家から出てきて、玄関前は大所帯になる。
「え?え?錬介、女の子連れてきたの?」
逸崎に急接近するのを、國神が止める。
「違えよ。逆に俺の方が連れて来てもらったんだ」
(芋づる式で出てくるな國神ファミリー……)
逸崎本人は、次々に出てくる愉快な人達を前に、黙ったままでいた。
するとまた國神のお姉さんが逸崎に話を振ってみた。
「ちなみに錬介は学校でどんな感じにやってるのー?」
弟の同級生となれば、興味本位で学校の様子を聞くのは自然だ。
しかし逸崎は転校したばかりだと國神は予め知っていたため、口を挟む。
「姉ちゃん。逸崎は学校に入ったばっかで__」
「サッカー部で誰よりも熱心にサッカーやっていますよ」
!?
「え〜。そうなんだ…!ウチの弟、家でもストイックで、筋トレ三昧に食事もゆで卵とサラダチキンばかり食べていてね」
「そうなんだよ。果物みたいに筋肉が実ってきているんだから。収穫は来年あたりかな」
「筋肉を収穫するって、どんだけやばい世界線ですか」
姉・妹・逸崎の女子間で賑やかになっていたが、張本人の國神はまた蚊帳の外になった。
会話に入らないほど、呆然としていたからだ。
(え?逸崎……?)
初対面だって言ったはずなのに、俺のこと、知っていたのか?