第2章 また明日な
ザァァァァッ
大雨が降り注ぎ、車の窓ガラス一面の視界が雨模様になっている。
逸崎と國神は間に1人分空けて後部座席に乗って、運転席にいる沙織さんは後ろの2人の様子をミラーでチラチラ確認しながら運転する。
「……そういえば國神くんってどこの高校?充ちゃんと同じ正堂学院?」
「!?。は、はい…!」
國神は驚き気味で返事した。そして隣の本人に眼差しを向ける。
「……あれ?言ってなかったっけ?」
「聞いてねえよ」
「ごめん。じゃあ今言った」
逸崎はしらばっくれるように返して、ネックウォーマーを上げる。
「何年生なんだ?」
「1年生」
「俺と同じかよ」
「お揃いだね」
物静かで口数が少なく、喋ったかと思いきや何か不思議で、そしてマイペースだ。
國神は少しずつだが、逸崎 充がどんな人物か掴んできた気がした。
そして、ムードメーカーで明るい沙織さんは補足する。
「2週間前くらいに、東京から引っ越してきたばかりだからね。転校先の正堂に初めて行ったのも5日前だから、そりゃ知らないわよ。これから仲良くなっていけばいいわ」
國神は記憶を辿る。
そういえば、他クラスで転校生が来たという噂を耳にした。
あれは逸崎だったのかと、今になって分かった。
しかし時期的に何か中途半端な気もした。
「どうして今の時期に転校なんですか?わざわざ東京の実家から離れたってことですよね」
國神が沙織さんに聞くと、空気が変わった。
「ま、まあ……色々あったっていうか…」
「?」
ふと隣の本人の様子を伺ってみたら、車の窓へ顔を逸らしていた。
窓ガラスの反射で顔が少し見えた。
「!」
顔下半分はネックウォーマーで隠れていたが、その目は何だか、とても悲しそうに映っていた。
外の雨が映っているだけで気のせいかもしれない。でも、まるで泣いて……
「……逸崎」
「!」
不意に声をかけると、こちらに振り向く。
「何?」
泣いてはいなくてホッとするも、何を話せばいいか別の問題が浮上する。
「その…‥秋田にようこそ」
「は?」
國神の突然のボケに沙織さんは盛大に吹いた。