第2章 また明日な
誘導されるがまま着いていくと、小さな一軒家についた。
表札には「澤田」と書いており、沙織に続いて逸崎も入ろうとする。
「入っていいのか?」
國神が聞くと、逸崎は家を指差した。
「ここ。私んち」
「え?お前の苗字、逸崎だよな?」
「澤田っていうのは母方の姓で、今はここで居候させてもらっている」
色々と情報が入ってきて少し混乱しつつも、玄関まで誘導されて、ようやく雨風が凌げる場所に着いた。
逸崎はボソッと「ただいま」と言って靴を脱ぐと、台所奥から、私服に着替えた沙織が姿を現した。
「お友達君もとりあえず上がって!温かいココアとか入れるから!好きかしら?」
「い、いえ。お構いなく」
取り敢えずお言葉に甘えて上がらせてもらうことにした。靴はちゃんと揃えた。
「私だけ悪いけど、着替えくるから、ゆっくり休んで」
さっきまでバテていておんぶした奴に言われ、國神は少し違和感を覚えたが、招かれている立場なので黙っておいた。
「お、おう。全然良いぜ。お前んちだし」
逸崎は自分の部屋がある2階へ上がっていき、國神は1階奥の台所へ足を運ぶ。
「いらっしゃい。とりあえず適当なとこ座って。もう少しであったまるから」
2人暮らしにしては広めの空間で、ダイニングテーブルを真ん中に、周りにはキッチンや冷蔵庫などの生活空間が見られる。
レンジ音と一緒に沙織はココアを取り出して、國神が座っている席の前に置いた。
「充ちゃん来るまで待っててね。その後家まで車で送っていくから、住所教えてね」
「いえ、そこまでしてもらうのは悪ぃです。傘借りに来ただけですから」
國神は自分の首に手を当てて、申し訳なさそうに言う。
しかし沙織は手の平をヒラヒラして、遠慮しなくていいのよと明るく振る舞う。
「いいのよ〜。充ちゃんが友達連れてくるなんて初めてだから」