第2章 また明日な
「……さっきお前を誘った奴ら、正堂学院のサッカー部で、俺もそこでサッカーやっている」
「そうだったんだ……私がいたから、誘われなかったってことか」
「?」
話を聞くと、突如グラウンドに乱入してきた他校生チームと試合することになり、チームメイトの人達は元々國神を呼ぶつもりでいた。
しかし相手に挑発されて、逸崎が代わりに出ることになったのだと言う。
さっきチームメイトから聞いた説明と大体同じだ。
「なんか…ごめん」
「いや何で謝んだよ?試合には勝てたし、それに、逸崎のプレーすごかったぜ」
國神はいい試合を見れたと満足していたが、逸崎は特に表情を変えずリアクションも薄かった。
「……こんなバテ気味じゃあ格好が付かないけど。そういえば、何で私の苗字知ってるの?」
「!。ああ。これ……逸崎のだろ?」
國神はジャージのポケットに畳んで入れてあったタオルを取り出した。
「あ、それ……」
「悪い。荷物ずっと置きっぱだったから、帰ったんじゃなくてどっか誰かに呼び出されてんじゃねえかって気がして、行ってみたら案の定だったってことだ」
「……そっか。ありがとう」
逸崎は國神からタオルを受け取り、綺麗にたたみ直しながら聞く。
「それで、何で助けてくれたの?」
「は?そりゃそうだろ。何言ってんだ?」
「え?」
「え?」
逆に何言ってんだって顔されて、逸崎は心外だった。
國神は思う。
(助けるのにいちいち理由なんか考えんのか?)
逸崎は思う。
(だって普通、面倒事に自分から関わって自ら火の粉を浴びに行く人なんて、いないでしょ)
互いに会話が噛み合わず変な沈黙が流れると、ポツポツと降ってきた。
ザァーーーッ
『!』
浴びたのは火の粉ではなく突如襲ってきた豪雨で、グラウンドが水たまりを作り始める。
2人は荷物を持って急いで大きな木陰に避難する。