第10章 オフ②
『わっ、、、』
「ちょっ、、」
床に尻餅をつく直前、ペットボトルを差し出してくれた凪君が腕を伸ばし抱き抱えてくれたお陰で衝撃はーーーーない。
「あっぶねー。」
衝撃はないけど、、、
私を受け止めた反動で床に座り込んだ凪君の上に向かい合うように跨ってしまっている
ーーーーこの体勢はヤバい。。。
『ご、ごめんね…今退くから、、、っ痛⁈』
「あ、髪引っ掛かってる。」
慌てて退こうとしたけど、髪が凪君のダウンジャケットのジッパーに挟まってしまって身動きがとれない。
『〜〜〜っ』
もう一度無理矢理引っ張ってみるも痛くて目尻に涙が滲むだけだった。
「いや…無理矢理引っ張ったら髪ちぎれると思うけど?」
『だ、だって、、、』
「いいからちょっと大人しくしててよ。」
『・・・・はい。』
動揺する私とは反対に凪君は至って冷静に髪を解き始めた。
(この状況、側から見たら無理矢理私が抱きついて襲ってるように見えるんじゃ、、、)
幸いな事に今皆んなは卓球に夢中で誰も私達には気付いていない。
もしこんな姿を見られたら凪君にも迷惑を掛けてしまうところだった
(てゆうか今日スカートじゃなくて良かったー……)
今日はボリュームのあるファーブルゾンに細身のデニムを履いてきた。
スカートだったら危うくパンツが丸見えだったかもしれない。
色々な意味で危うかったな……と内心冷や汗を拭う。
『・・・・。』
「・・・・。」
『えっとー……レモンティーありがとう。後で頂きます…。』
凪君が渡してくれたペットボトルはベンチに鎮座している。
「あぁ、間違えてあったかいの買っちゃったから。」
『そう、なんだ…。』
再び流れる沈黙。
凪君の吐息が感じほど密着した距離と身体。
顔を上げる勇気はなく、俯いたまま髪が解けるのを大人しく待つ。