第9章 オフ①
隣を歩く千切君に目を向けると、さっきまでの表情とは一変、バツが悪そうな顔をしている。
「俺のこと見てろ、とか言ったくせに途中で交替させられて……何かカッコわりーじゃん。」
『え?何で……⁇
あんなに走って走って………限界まで走り続けてかっこ悪いなんて思う人いないよ⁇
さっき、カッコ良かったって言ったったよね?
それにスタジアムの歓声、聞こえたでしょ⁇
千切君がベンチに戻る時なんてサポーターからの拍手、鳴り止まなかったじゃん。
それって全部千切君が頑張った証なんだからっ、だからそんな風にーー」
勢いよく捲くし立てたところで千切君がストップ、と片手を私の顔の前に出してきた。
「も、もう、分かったから…サンキュ。」
耳が赤く染まっている千切君を見て、『あ…』と声が漏れ出る
近くにいた若いカップルがクスクスと笑いながら横を通り過ぎ、今更手で口を覆うも時すでに遅し。
『ご、、ごめん。つい……』
「いいって(笑)
正直、交替はマジで悔しかったし自分の不甲斐なさに泣けてきたけど…、今のの言葉でちょっと救われた。ありがとな?」
眉を下げて微笑む姿に胸がキュッと締め付けられる。
千切君こそその顔は反則でしょ……と心の内でツッコミを入れる。
それからお互い何となく黙ったまま歩いていると、千切君が徐に口を開いた。
「あのさ…。あの夜、の部屋出る時に俺が言った事、覚えてる?」
『あー…うん、覚えてる…。』
"もうここには来ないから"
背を向けた千切君がそう言って出て行ったのは今でもハッキリと覚えている。
「次にと会う時はブルーロックの外で会いたかったんだ。」
『・・・・?』
てっきり千切君は私ともう会わないからって線引きをしたんだと思ってたけど、、、、
そうじゃないの、、、、?