第9章 オフ①
U-20日本代表に勝利したブルーロックメンバーは2週間のオフをもらったらしい。
没収されていた携帯も手元に戻り、久々の外の世界は開放感でヤバいと電話口でテンション高めに話す乙夜君。そんな彼から
"試合に勝ったご褒美が欲しい"
そう言われた。
何か強請られるのかと思いきや、それが今日のこの"渋谷デート"だった。
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「とりあえず立ち話もなんだし、行きたいカフェがあるんだけどそこ行っていい?」
『うん、いいよ。』
「はい、じゃあ手。」
手を差し出す乙夜君。
え?と目を瞬かせると、乙夜君は「デートなんだから。」と言って私の手を取り指を絡めてきた。
所謂恋人繋ぎというやつだ。
『・・・乙夜君てさ、女の子慣れしてるよね。彼女途切れないでしょ?』
「ん〜女の子は好きだけど、俺付き合ったら結構一途なタイプなんだよね〜。
ってその目は信じてないっしょ?」
『そんな事ないけど…。ちょっと意外だなって。』
「ならちゃんが彼女になって試してみる?」
『・・・だからそういうノリが軽く見えるんだって。』
呆れたように笑うと乙夜君は「ダメかぁ〜」と言いつつもどこかそんなやり取りを楽しんでいるように見える。
ギュッと握られた手に触れる肩。
私よりずっと背は高いのに歩幅は合わせてくれて。
他愛のないやり取りをしながら渋谷の街を肩を並べて歩く。
こうして時折笑いながら歩いていると、本当に恋人にでもなったかのように錯覚してしまうから、やっぱり女の子の扱いが上手いな、と思う。
「あ、ここだ。」
駅から少し離れたその店は外にはテラス席もあり落ち着いた雰囲気のカフェだった。
『今時の高校生ってこんな大人っぽいカフェでお茶してるの?』
「さぁ?俺はこーゆうとこよりカラオケとかスタバの方が好きだけどね。」
ーーーん?
乙夜君が行きたかったお店……なんだよね?
不思議に思い首を傾けると、「とりあえず入ろ?」と乙夜君はドアを開け中へと通してくれる
時間的なこともあり、店内は満席に近い程賑わっていた。
「結構混んでんね。ちゃんが良ければテラス席にする?ちょっと寒いかもだけど。」
『いいよ、テラス席の方が落ち着くしむしろそっちがいいかも。』
「オッケ、じゃあ外行こ。」