第9章 オフ①
あの日、前半が終わりハーフタイムに入る際、乙夜君から"試合終わったらそこで待ってて"と密かに言われた。
そして試合終了後、観客がぞくぞくと外へ出て行く中ぽつんと1人で余韻に浸っていると、再びピッチに乙夜君が現れた。
乙夜君は私を見つけるなり手に持っていた紙をグシャッと丸めるとそれを勢いよく投げてきたのだ。
反射的に身体が動きどうにかそれをキャッチすると、
「それ俺の番号。明日、携帯戻ってくるから絶対連絡して。」
丸めた紙を広げると確かに携帯番号が書かれていた。
「いーい?絶対だからね?」と指を差し、念を押す姿が何だか可愛いく見えて『分かったよ。』と笑って頷いた。
労いの言葉をかける暇もなく再び彼はロッカールームへと走って消えて行ってしまったーーーー。
正直、連絡を取るのは凄く迷ったし悩んだ。
私と繋がるのはマイナスになるんじゃないかって。
知り合い、という訳でもただの友達、、というわけでもない。
仕事とは言え、乙夜君とは身体を重ねた仲だ。
それを乙夜君は割り切れてないんだとしたら、、、
連絡はしない方が良いに決まってる。
その翌日、携帯を手にしては置く……
そんな事を何度も繰り返し、散々葛藤した挙句私はーーーー
もう少しだけ彼らと繋がっていたい、そんな自分本位な選択をした。