第8章 キックオフ
(どうしよう……何て声掛けたら、、、、)
何か声を掛けたいと思うのに上手い言葉が見つからない。
頑張れ?
いや、もう十分過ぎるぐらい頑張ってる。
かと言って他に何て声掛ける?
ぱくぱくと口を開いたり閉じたりしていると、千切君がフッと笑みを溢した。
そして
「俺のこと、ちゃんと見てろよ?」
多分、そう言った。
コクッと小さく頷くと、千切君は満足そうな顔でベンチの方へと入って行った。
思わず胸をギュッと抑える。
(ドキッとした〜………
てかもうご家族の方、見れないんですけど、、、)
そんな大きな声じゃなかったし、聞こえてないだろうけど……何だか気まずい。
いや、別にやましい事はしてないし気まずくはないんだけど。。。
複雑な心境で身を縮こませていると、乙夜君がこっちに向かってヒラヒラと手を振っていた。
『ん?』
何やら手招きをしていてもう少し近くに寄れと合図をしている。
周りの視線を気にしつつもフェンスまで近づくと、
"ーーーーーーーー"
敢えて声には出さずに唇の動きと、指の合図だけで伝えてきた。
オッケー?とジェスチャーする乙夜君に私も指で丸を作り合図を送る。
(うん、多分……理解出来た。)
そんなやり取りをしていると背後から社長の声が聞こえてきて、慌てて乙夜君に手を振り席へと戻る。
(社長に見つかると色々突っ込まれて面倒そうだし。)