第6章 6夜
声を震わせながら髪をくしゃっと掻き上げる彼をじっと見つめる。
彼自身、きっと今も葛藤しているんだろう……
悔しさとか歯痒さとか、怒り悲しみ、、、、色々な感情に。
2人の間に何があったのか、私には分からない。
ましてやサッカーの事もブルーロックの現状も分からない。
それでも彼が凪君を大切に想ってる事は痛いぐらい伝わってきた。
『ねぇ…名前、聞いてもいい?』
「・・・え?あー……玲王。」
『玲王ね。私は。
私達ようやくお互いの名前、知ったね。』
ニコ、と微笑むと玲王も少しだけ表情を緩めた。
「だな。名前も知らねーヤツに話す内容じゃないよな。わりー…。」
『ううん、そう言う事じゃなくて。
玲王の事、何も知らないけど初めて会った時から何か、、、ずっと気になってて。
何でか分からなかったけど、今少しだけ分かった気がする。』
「・・・何?」
『今の玲王の瞳が私と似てるから。』
玲王は意味が分からないとばかりに首を捻った
そんな彼にフッと笑みを溢し、少しだけ冷めた紅茶を一口啜る。
『・・・ここにいる子は皆んな瞳がキラキラしてて…夢とか希望とか?可能性は無限って感じで。
凄いなぁー…って思う反面、自分とは住む世界が違う人達なんだって会うたびに痛感させられた。
別に卑屈になってる訳じゃないの。
ただ……自分の高校生時代を思うとあんな風にキラキラした時なんて無かったなって。
ずっと真っ暗な中、歩いてきたから。』
「真っ暗……?」
『うん、真っ暗だったねー…
将来の夢なんて語った事ないし、そもそも明日の自分がどうなってるのかすら分からなかったぐらいだから(笑)
今の玲王と同じ歳ぐらいの時に私はもう、色々な事を諦めちゃってた。
それが一番楽な方法だったから…。』
カップに残った薄茶色の紅茶に視線を落とすと
そこには昏い瞳の自分が映ってた。
ーーーー抱えるものは違うけど、高校生の頃の自分と、ブルーロックにいながらも、昏い瞳をした玲王が重なって見えたんだと思う。
だから彼を部屋に招き入れた。
あの頃の自分の手を引くように、気付けば玲王の手を引いていた。