第6章 6夜
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『ちょうど温かいものでも飲もうかなってお湯沸かしたとこなんだけど、何飲む?
って言ってもコーヒー…はさすがに良くないし、、そうなると紅茶、、あっ、ハーブティーがあるからそれで良い?』
ストッカーを漁りながら彼の方を振り向くと、部屋の中央に鎮座するベッドをじっと見ていた。
(あー……そう、だよね。)
彼は多分仕事の事は知らない。
そうなるとこのやけに大きなベッドも、セキュリティが厳重な扉も、シャワーとトイレまで完備されたこの広い部屋に疑問を持つはずだ。
どこから説明しようかと口を開きかけた時、
「あー…じゃあハーブティーで。」
部屋の事には一切触れず、そう答えた。
『・・・・ん。じゃあ私も同じのにしよ。』
・・・・・
コポコポとお湯を注ぐとハーブの良い香りが部屋に広がる
『ごめん、椅子とかないから適当にラグの上座って?』
トレーを床に置き湯気の立つカップを一つ差し出す
「サンキュ。」
『インスタントだけどねー。』
ベッドを背に、私達は並んで床に座った。
流れる沈黙ーーー…
『あー…あったまる〜…』
熱いカップを両手で持ちもう一口啜る
「これカモミール?」
『えっ、そうそう!もしかして紅茶とかに詳しい?』
「いや…そこまでじゃねーけど。家にいる時たまに飲むぐらいで。」
『・・・・わかる。何か、紅茶似合うもん。』
「は?何だよソレ。意味わかんねー。」
悪戯っぽく顔を覗き込むとプイッとそっぽを向いてしまった。
『フッ、ごめん。でもカモミールには安眠効果があるんだって。
効果、あると良いけど…。』
「・・・・。」
カップに口をつける彼を横目でチラリと確認すると、やはり寝れてないのか疲れた顔をしている。
(でも、ここに来てくれたって事はきっと何かを吐き出したくて来たんだよね……。)