第5章 5夜
仕事の時は"モカ"で貫き通してるし、ましてや本名なんて聞いてくる客はいない。
それが暗黙のルールだから。
ここ、ブルーロックでは別にどっちでも良かった。
本名を名乗ったところで彼らとはこの中だけ、しかも期限付きの関係。
ここを出ればもう2度と会う事はないのだからーーー
『ーーーー。』
「……」
千切君はフッと笑みを溢すと腕を伸ばし自身の胸に私を抱き寄せた。
「うん。の方が似合ってるよ。」
『・・・・。』
シャンプーの香りと彼の体温に優しく包み込まれて、思わず錯覚しそうになってしまう。
ーーーー私が普通の女の子だったら、って。