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ハリー・ポッターと贖罪の代行者

第11章 【新たなるもの】


 クリスとドラコが『姿現し』で漏れ鍋へ飛ぶと、店主のトムが唖然としたように口を開け、次の瞬間には怯えた顔でカウンターの隅まで下がった。
 魔法界の玄関口である漏れ鍋は、放っておいてもあれこれと色々なうわさが飛び交う店だ。そんなところにA級手配犯が堂々と現れたものだから、この時のトムはどれほど驚いただろうか想像に難くない。

 他にも店にいた魔法使い数人が、まるで幽霊でも見た様にあわてて壁際まで移動した。

「やあ、トム。ごきげんよう」

 カウンターの横を通り際、クリスがトムに気軽に挨拶すると、トムが緊張のあまり1枚の板の様に固まった。
 それを見たクリスは喉の奥で「くっくっく」と笑った。我ながら性格がねじ曲がっているなと思う。

 そして店の奥からダイアゴン横丁に出ると、あまりの殺風景にクリスは呆然としてしまった。店はどこも閉まり、出入り口や窓にも板が張り付けられている。
 出歩いている人は本当に数える程度しかおらず、その誰もが下を向き、そそくさと通り過ぎていった。

「まさかこれほどとは……」
「これでもまだ『世界征服ごっこ』と呼べるかい?」

 クリスが答えるよりも早く、先に杖の方が反応していた。
 ――面白いと、奴にしては中々良いステージを用意したじゃないか、と言っているような気がした。
 やはりあのジジイ、とんでもない破壊思考の持ち主だ。そうじゃなければこの町の様子を見て、杖と同調して胸が高鳴る訳がない。

 胸が熱くなってきたのはドラコには黙っておきながら、クリスはW・W・Wへの道を進んだ。
 店は中央通りに面していたし、なによりもこの悲惨さを吹き飛ばす様な軽快な呼び込みのおかげで、店の様子が良く分かった。

「おーい、ジョージにフレッド。相変わらず元気そうだな」
「その声はまさか……」
「クリス!!?」

 以前ほどの賑わいはないが、それなりに客の居る店内を、フレッドとジョージは駆け足で近づいてきた。――と同時にクリスの隣にいるドラコの姿を見て、2人が同時にピタリと止まった。
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