第11章 【新たなるもの】
「痛つつ……な、何だったんだ、今の?」
床から立ち上がり、クリスは恐る恐る杖を手にした。だがもう先ほどの様な力の暴走は見られない。
「ほほう、今ので気を失わずに済んだのなら上々だ。杖がお前を新たな持ち主として認めたらしい」
「今のが?」
「ああそうだ、お前も感じただろう?体中から溢れる熱を。それこそ儂の魔力の根源よ」
「あれが魔力の根源?質量だけでいうなら多分ダンブルドアやリドル並みだぞ!?」
ちょうどそこに、ドラコがどこからかパンとかぼちゃジュースを持って帰ってきた。
ドラコのプライドからして、2度もマグルの店でチンケな魔法を使って買い物はすまいと思ったのだろう。多少の危険を冒しても魔法使いの店に行ったドラコがなんだか彼らしくて、クリスはつい笑ってしまった。
「お帰りドラコ。首尾はどうだった?」
「どの店も閉まってるし、運よく空いてた店ではかなり吹っかけられた。それと人さらいの一行と鉢合わせしそうになったが、上手く凌いできたよ。それで、杖の件はどうなった?」
「一応上手くいった……と、思う」
「と、思う?やけに自信なさげじゃないか。試しに見せてくれないか」
「よし、それじゃあ……ルーモス」
先ほどの熱量を考え、なるべく小さいイメージの杖明かりを灯した。すると杖の先からポウッ…と淡い光が灯った。
「上々じゃないか、何がそんなに不安なんだい?」
「かなり力を抑えてこれだぞ、全力を出したらどうなることか……」
「そりゃあ良い、僕の考えた作戦におあつらえ向きだ」
「お前が考えた作戦?」
「ああ、そうだ」と言いながら、ドラコはパンにかじりつきながらかぼちゃジュースの栓を抜いてそのまま口をつけた。
いくらお腹が減っていたとはいえ、あの貴族然としたドラコの意外な姿に、クリスは驚きと共に感心してしまった。
まだ顔色は青白く目の下のくまは酷いが、その奥にある瞳には僅かに光が灯っているように見える。
それが、今のクリスには嬉しかった。