第10章 【世界征服ごっこ】
確かにベラトリックスよりかはマシかも知れないが、この祖父だ。いきなり魔法が逆噴射しかねない。
だが確かにここでこの老父の元を訪れたのも、何かの縁だ。クリスはゴクリと生唾を飲み込んだ。
「退屈だからと裏切ってくれるなよ?」
「安心しろ、退屈などさせん。性格の悪い皮肉屋で、常に好戦的で人を見下すのが得意。正に最高に最凶のパートナーだ」
そう言いながら、祖父は大層楽しそうにニヤリと口角を上げた。
確かに『退屈』な冒険は、そろそろ飽きてきた頃だ。
血も繋がってない癖に、クリスも祖父と同じようにニヤリと口角を上げた。
「最高で最凶か……確かに悪くない」
「それでリドルの小僧に分からせてやれ。お前がやっているのは血の粛清ではなく、単なる世界征服ごっこだとな」
「皆で仲良くお手てつないで征服ごっこか、確かに言われてみればそうだな!!」
「……ククク」
「……ハハハ」
「「クハハハハ――ハァーハッハッハ!」」
まさか国中で巻き起こっている争乱を、世界征服ごっこと言って高笑いする幼馴染とその祖父に対し、ドラコは頭痛がしてきた。
だが多少行き過ぎな面もあるが、やっと天邪鬼で我の強いクリスらしいクリスが戻ってきてくれたことに、ドラコはほんの少しだけ安心した。
「それじゃあ、その杖はどうする気だい?」
「そうだなぁ……この際だ、折って消し炭にしてやろう」
クリスは早々にへし折ろうとしたが、腕では中々へし折ることが出来ず、靴で踏み、てこの原理でへし折ってやった。するとドラコが「僕にもやらせろと」言い出した。
どうやら『死喰い人』時代に教師役として相当厳しく調教されたらしく、内心かなり鬱憤が溜まっていたそうだ。
2人は折れたベラトリックスの杖に魔法で火をつけた。その瞬間、なんだか胸のつかえがスーッと消えていくような気がした。
「これは良いな」
「よし、いずれポッターの杖にもやってみよう」
「そんな事をしてみろ、今度はお前の杖をへし折ってやる」
「…………」
「…………ぷっ」
「「あはははははは!!」」
いつまでたっても変わらない子供じみたやり取りに、2人そろって笑ってしまった。