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ハリー・ポッターと贖罪の代行者

第10章 【世界征服ごっこ】


 その日の夜はギリギリ寝られるだけのスペースを床に作り、旅行用のマントに包まって寝ることにした。
 眠るのに邪魔なものはどかしたが、絨毯すらない石畳の上に旅行用マントだけでは、とてもじゃないが眠れたものではない。
 そんな時、ふわっとドラコが自分の旅行用マントをかけてくれた。

「ドラコ……?」
「ああ悪い、起こしたか?」
「いや、元から寝てない」
「そうか……」

 そう言いつつ、ドラコはクリスと目を合わさずにそっぽを向いていた。ドラコの顔色は相変わらず真っ白だし、シルバーグレイの瞳には光がない。クリスはドラコの手を取った。

「ドラコ、大丈夫だ。きっと……」

 「きっと」何が大丈夫なのだろう、それを曖昧にしつつ、クリスはドラコの手を握ったまま目を閉じた。すると安心したからか、クリスはすぅっと眠りについたのであった。

* * *

 翌朝目を覚ますと、クリスは早速杖を手に入れるために、祖父の肖像画に話しかけた。

「それで、貴方の棺はどこにあるんですか?」
「何を馬鹿な、それを探すのが墓荒らしの醍醐味だろう?案ずるな、杖と人は引き合うものよ。本物に当たればその瞬間察するであろう」

 それだけを言うと、肖像画に描かれた祖父は静かに目を閉じて動かなくなった。

「嘘だろう!?待て、起きろこのクソジジイ!!」
「クリス、僕は『姿くらまし』で食料品を探してくるから、後はまあ……適当に頑張ってくれ」
「あっ、逃げるな、ドラコ!!」

 その言葉も聞かず、ドラコはクルッと回って姿を消した。
 ……こうだ、こう言うところがあるから、ドラコに対して素直になれず、面と向かって好きだとなんだとかそういう言葉が口から出てこなくなるのだ。

「ああぁ、もうっ!!男なんて頼る方が間違っていた!!!」

 クリスが叫ぶと、立てかけられていた他の肖像画たちがクスクス笑いだした。
 結局こうしてやりたくもない霊廟での宝探し――もとい墓暴きを、クリスは半分怒りながら、もう半分は自棄になりながらも、たった独りで頑張りざるを得なくなったのだった。
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