第10章 【世界征服ごっこ】
「それじゃあ賢者の石とか、そういう物を手に入れようとは?」
「賢者の石や火の鳥の生き血、人魚の肉、他にも死の秘宝など色々と探してみたが無駄足だった。だから儂は息子に我が野望を押し付けた。本人は大層嫌がっていたがな」
なるほど、祖父の肖像画を普段は目に入らない秘密の部屋に隠したのには、こう言った反抗心からであろう。
それと同時に、母様が大きくなったお腹を撫でている絵も、地下深くに隠したかったのかもしれない。
一見すると微笑んでいるが、どこか寂しそうな、嬉しそうだけれど泣きそうな顔で大きくなったお腹を撫でている絵など、屋敷に堂々と飾れるわけがない。
けれど、どんな理由があったにせよ、父様が直接描いたものだ。そこには2人にしか分からない特別な想いがあったのだろう。
それがどんなものだったのか、もう答えを知ることは出来ないけれど……。
母の肖像画を思い出し、暫くアンニュイな気持ちに浸ってしまったクリスだったが、先ほど言いかけた事を思い出し、祖父の肖像画に向かって話しかけた。
「さっきも言ったが、ここには杖とかないのか?これだけお宝があるんだ、1本くらいあるだろう?この際だ、故人のでも良い」
「何だ、貴様は墓暴きに来たのか?」
「まさか。さっきも言ったけれど、色々あって今はベラトリックスの杖を使っているんだ。その代わりになるのなら何でも良い」
柄にハンカチを巻いていたって気分が悪くなる杖もなかなか無いだろう。
オリバンダーさんは直ぐに手放すことになると言っていたから、もしかしたら今がそのチャンスなのかもしれない。
期待を背負うクリスの肩に、ドラコが手を乗せた。
「待てクリス、相性の悪い杖を引き当てたら大惨事になる可能性もある、もっと慎重に……」
「――待て小僧、儂に良い考えがあるぞ」
「良い考え?」
「儂の杖を持っていけ。他の墓と同様、棺の中で共に眠っておる」