第8章 【相思相愛】
「――僕も、その次は一体どうするんだい坊や?」
気が付くと、入口にベラトリックスが立っていた。
クリスの上に覆いかぶさっていたドラコは咄嗟に杖に手を伸ばしたが、ベラトリクスの杖の方が先に照準を2人に当てていた。
たじろぐ2人に、ベラトリクスは先ほど以上に極上の生餌を前にした蛇の様に舌なめずりをした。
(どうする?この場ではドラコだけが頼りだ。クソっ、あの時杖を流されたりしなければッ!!)
必死になるクリスに対し、ドラコの表情には若干の余裕がみられた。何か勝機があるのだろうか?
どちらにしろ、今自分が下手に動くべきではない事だけは確かだ。
「おかしいですね伯母上、約束の10分にはあと少し間がある筈ですが?」
「様子がおかしいと思って来てやったのさ。そうしたら青臭い青春ごっこがはじまってね。聞いているこっちの方がむず痒くて耐え切れなくなったのさ」
「青春ごっこはお嫌いですか?貴女が闇の帝王に持っている劣情よりはマシだと思いますけどね」
その話しを聞いて、クリスはドラコとベラトリックスを交互に見た。
ベラトリックスの顔は青いような赤いような口に出せない色をしていた。それが全ての答えだった。
「わ、私が闇の帝王に劣情をだと!!?このっ、薄汚いヤツ!!そんなものをこの私が持っているわけなかろう!!私にあるのは、ただあの方への忠誠のみだ!!!!」
「そうですか、作戦会議中も目立つように懸命に挙手をしているみたいでしたけれどね。『わが君、その役目を私に!』『わが君、その役目を私に!!』」
まるでハーマイオニーをからかう時の様に手を上げてピョンピョン跳ねるドラコに、クリスは思わずくぐもった声で笑ってしまった。
するとベラトリックスはこれ以上ないくらいの憤怒の表情を見せた。