第8章 【相思相愛】
「……何故だ?」
「ドラコ?」
「何故だ!?何故そんなことを言うんだ!?何故僕に命乞いをしない!?何故僕に助けを請わない!?何故僕を必要としない!?何故だ!何故だ何故だ何故だ何故だ!?」
「な、何を言って……?」
「何故そんな目で僕を見る!?僕に一言助けてと言え!僕のことを必要としろ!!僕のことを無視するな!!僕をっ……」
ドラコがクリスの方に振り返ると、泣き叫びながらクリスをベッドの上に勢いよく押し倒した。
そして少し冷たい雰囲気を持つ独特のブルーグレイの瞳を涙でにじませ、悔し気に眉根を寄せた顔は、小さな子供の様な表情だった。
「ドラコ、少し落ちついて……」
「――あの時、禁じられた森で約束したじゃないか。一生この手を放さないと。それなのに君の隣にはいつもポッターがいるようになった。どうしてだ!?君にとっての一番は、この僕じゃなかったのか!!?」
駄々をこねる子供のように叫んだドラコの目から涙が零れ落ち、それがクリスの頬を伝った。
あのドラコがプライドも何もかもをかなぐり捨てた一瞬の静寂の後、それを見事に打ち砕いたのはクリスの大笑いだった。
「……っぷ、ははは、あはははは!」
「な、何故笑う!?」
「いや、何年も前に、同じような台詞を聞いたなって……」
クリスはどうにか笑うのを堪えようとしたが、堪えようと思えば思うほど、笑い声が止まらなかった。
そう言えばあの時のドラコは、恥ずかしさから顔をタコの様に真っ赤にしていた記憶がある。
なんとか苦労して呼吸を整えると、クリスのルビーのように紅く輝く瞳がドラコを捉えた。
「変わらず約束を守ってくれてありがとう、ドラコ……そんなお前が、私は好きだ」
そうだ、ドラコはいつだって自分のすぐ近くにいてくれた。約束通り、いつでも手の届くところにドラコは居てくれたんだ。
それを振り切ったのは自分の方だったにもかかわらず、ドラコはずっと自分の手を握り続けてくれた。
クリスはドラコの頬に優しく手を当て、涙をたたえて輝るドラコの瞳に優しくキスをすると、さらに優しくドラコの唇にキスをした。
「私が世界で一番大切なのはお前だ、ドラコ。例えこの先に何があっても、それだけは変わらない」
「クリス、僕も……――」