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ハリー・ポッターと贖罪の代行者

第8章 【相思相愛】


「笑うんじゃないよッ、何が“闇の姫君”だ!!貴様なんていなくとも、優秀な配下が居れば世界はわが君の物となるのだ!!」
「おや伯母上、まさか自分がその優秀な配下だなんて言いませんよね?」
「そうだっ、私以上の配下はいまい!!」
「ほうら、まるで先ほどの僕たちのようだ。どうです伯母上、青臭い青春ごっこのお味は?」

 最後にドラコが、「はッ!」と鼻で笑ってやれば、ベラトリックスは怒りと羞恥心で顔を真っ赤にし、2人にむかって杖を振りおろした――様に思ったが、それよりも先に、赤い光線がベラトリックスに直撃した。
 何が起こったのかよく見てみると、いつの間にかドラコが杖腕の右手ではなく、反対の左手に杖を隠し持っていた。

「ふう……咄嗟とは言え、杖腕でなくとも無言呪文が上手くいって良かった。今のうちに地下牢にでもぶち込んでおこう」
「な……なあドラコ。お前いつの間に杖を持ち換えてたんだ?」
「あぁ、アイツは君以上に短気だからな、扱いやすいったらないさ。ヤツの恥ずかしい部分を煽ってやったら、頭に血が上って些細なことなんてすぐ忘れる。だから隙をついて杖を持ち替えて、攻撃する機会を窺ってたんだ」

 なんだか遠回しに馬鹿にされている気がしたが、問題はそこじゃない。ベラトリックスを敵に回したという事は、ヴォルデモートを敵に回したという事だ。
 現状を見るに、今のマルフォイ家の力は『死喰い人』達の中でもかなり低いと感じられる。もし殺されるとしたら今が好機だ。

「不味いぞ、ドラコ!今すぐおじ様とおば様と一緒にこの国から出るんだ!なるべく遠く、追手が付かないうちに早く!!」

 クリスはただ純粋にドラコの事を想い、肩をがっちりつかんで熱弁した。
 しかしそれを聞いたドラコは大きく呆れたようにため息を吐いた。

「全く、君の脳みそは相変わらずスカスカだな」
「なんだと!?」
「だってそうじゃないか」

 そう言いながらドラコはガッチリつかんだ肩の手を下ろさせた。そしてクリスの顎に指先を添え、クイッと持ち上げると、クリスの唇に、ついばむ様な軽いキスをしてこう言った。

「好きな女を捨てて国外逃亡、なんて無様な真似が出来るわけないだろう?」
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