第7章 【ラブグッド家】
それからまた数日が立ち、ホグワーツの生徒たちがウィンターホリデーの為、ホグワーツ特急に乗って返ってくる日になった。
久々に級友の顔を見たかったが、念のためクリスは結界が幾重にも仕掛けられた家で待つことにした。
杖を無くした緊張の所為か、いつも心のどこか……強いて言えば胃の辺りが重く感じていた。
だが、久々にルーナと会えるのかと思うと、嬉しくてつい頬が緩くなっていた。
またあの意味不明のことを言ってこちらを混乱させてくれるのだろうか。それとも大きな赤カブのイヤリングを付けて、初っ端から笑わせてくれるのだろうか。
予想のつかないルーナの行動を想像すると、いつでも笑える気がしてくる。
いっそルーナがホグワーツを卒業したら『W・W・W』に就職したら良い。そうしたら大繁盛間違いなしだろう。
そんな陽気なことを考えながら2人の帰りを待っていたら、コンコン、と扉がノックされた。
クリスは反射的に返事をして扉を開けた瞬間、赤い閃光がクリスの耳たぶの辺りをかすめた。
「何してるんだ!計画通り一発で仕留めろ、クソが!!」
「うるせぇ!じゃあお前がやれ!!」
会話の内容からして、こいつら2人は『死喰い人』か『人さらい』だ。
ラブグッド家の人間が、自分の家だというのに、わざわざ扉をノックした時点で何かがおかしいと気づくべきだった。
クリスは浮かれすぎていた自分に対し小さく舌打ちをした。
また、2人の背後にいるルーナとラブグッド氏の抵抗がないのを見ると、もう杖を奪われてしまった後のようだ。
「よう、お前がクリス・グレインだな」
「だったら何だというんだ、チンピラ風情が。気安く私に対して口をきくな」
精一杯の虚勢を張ってみたが、絶体絶命の大ピンチなのは変わらない。こういう時どうすれば良いのか……。
ジリジリと距離を詰められ、こちらも少しずつ後ろに下がる。キッチンには包丁がある筈だが、武器を手にした途端、自分とラブグッド家の2人に危害が加えられる恐れがある。
おちつけ、とにかく焦ったら負けだと、クリスは自分に言い聞かせた。