第7章 【ラブグッド家】
「――って言うかこいつらもバカだよな。指名手配犯に杖の情報まで載せて、俺たち『人さらい』が狙わないわけがねぇ」
「おまけにホリデー休暇を3人で過ごそうだなんて手紙をフクロウに持たせるなんてな!!」
「まったくだ、親切極まりねぇぜ」
そう言ってゲラゲラと下品な笑い声を響かせながら、2人の内の1人が訊ねてきた。
「それでどうする、クリス・グレイン?お前が大人しく俺達についてきたら、此処にいる家族は見逃してやっても良いぜ」
「……それは本当だな?」
「ああ、天に誓ってやるよ」
「それじゃあ分かった、お前らに着いていく」
沢山世話になったラブグッド家の人たちに、唾を吐くような真似は出来ない。クリスがそう決心すると、もう1人の『人さらい』がルーナを見てこんなことを言い出した。
「おい待て、こいつもハリー・ポッターの仲間じゃなかったか?確か2年前、魔法省に一緒に潜入したって言う……」
「そういえばそうだったな、よし、こいつも人質として連れていこう!」
「待て!約束が違うぞ!!」
「俺は“天に誓った”んだ。お前に誓ったわけじゃない」
そう言いながら、チンピラ2人はまた下品にゲラゲラ笑いだした。
クリスは怒りで手のひらに爪痕が着くほど握りしめたが、ここで暴れたら余計酷いことになるだろう。
すこぶる悔しいが、今はこの2人に着いて行く他はなさそうだ。
「待ってくれ!娘を返してくれ!!グレインを引き渡すから娘には手を出さない約束だったはずだ!!」
「悪いなジジィ、予定が変わったんだ。お前も死にたくなければ、ザ・クィブラーの掲載記事を変えた方が良いぜ?」
「そんな……」
床にへたり込み、呆然としたラブグッド氏に、ルーナが小さくささやいた。
「心配しないでパパ、すぐに帰ってくるから」
「ル、ルーナ……」
「さあ、お別れの時間はもう終わりだ!とっとと移動するぞ!!」
クリスとルーナの両腕ががっちり縄で拘束されると、姿くらまし特有のあのギュッとゴム管を通り抜ける感覚がした。
一体どこに連れていかれるのだろう……。
不死鳥の騎士団の様にどこかの屋敷か、それともアズカバンの様な天然の要塞か。
あれこれ考えたクリスが目を開けると、そこは何度も目にしたことがある、マルフォイ邸の大きな門だった――。