第6章 【散った友情】
入学当初はロンと一緒にハーマイオニーの悪口を言っていたのに、今は2人の仲を取り持つのがある種の楽しみになっている。それはハリーも一緒だった。
お互い焚火を見詰めながらコーヒーを飲んでいると、テントからしっとりしたラジオの音楽が流れてきた。
それに交じり合うように2人の囁く笑い声が耳に入ると、クレアはくすぐったいむずむずした甘い空気に耐えられず、ついつい口元を抑えながらニヤニヤしていた。
そんな折、ハリーが突然こんなことを言い出した。
「ねえ、クリス」
「うん?」
「この旅が終わったらなんだけどさ、良かったら僕と一緒に暮らさない?」
唐突なるハリーの爆弾発言に、クリスの思考は一瞬停止した。パチパチと爆ぜる薪の音がやけに耳に残る。
「えっとハリー、それは……」
「ち、ちがうよ、誤解がないように言っておくけど、その、同棲ってわけじゃなくて、シリウスも一緒に!3人で家族として暮らそうよ!!」
――3人で、新たな家族に。
今まで冗談めかして言っていたこともあったが……あぁ、そうか、遂にこの時が来たのだ。
この旅が終わったら、皆にはそれぞれ帰る家がある。だけれどもハリーとクリスにはそれが無い。
一応シリウスにはグリモールド・プレイスがあるにはあるが、死んでも戻る気はないだろう。
そんな3人にとって「ただいま」と言って帰る場所があることが、どれだけ幸せなのか。
「おかえり」と言ってくれる人が居ることが、どれだけ幸せなのかをクリスも痛いほどに知っている。
想像しただけで胸が暖かいもので満たされるような心地とともに、胸の奥に1人、ぽつんと忘れえぬ人物がいた。
「なあ、ハリー」
「なに?」
「あのプライドの高いケナガイタチは、今頃何しているんだろうな?」
「クリス……」
「相も変わらず、ホグワーツで『父上~、父上~』て泣き声を上げていたら面白いんだけどな」
ルシウスおじ様とナルシッサおば様の事も心配だが、もっと心配なのがドラコだ。
マートルのトイレで泣いていたあの日、また、ダンブルドアが亡くなったあの夜の様子から、無理やり死喰い人をやらされているような気がしてならないのだ。
それにもし本当に心の底から『死喰い人』になったのだったら、あの最後の時、涙を流しながら別れを告げた理由に繋がらない。