第1章 Last summer vacation~Harry~
「ドラコと言えば、アイツの名前ってりゅう座と一緒なんだよな。ブラック家の人間って、どうして星に因んだ名前なんだろう?」
「確かに言われてみればシリウス、ドラコ、ベラトリックス、後は……」
「アンドロメダ、ナルシッサ。それとレギュラス」
「それ誰だっけ?」
「例の『死喰い人』だったシリウスの弟だよ」
そう言われて、ハリーはグリモールド・プレイスにあったブラック家の家系図を思い出した。それを見ながら自身の親族がいかに最低であるかをシリウスが説明しれくれた。
あの時シリウスは淡々と話していたが、その胸中には色々な思いが渦巻いていたことだろう。
どんな不仲であっても、家族は家族だ。そんな簡単に切り捨てられるものではない……。
ハリーとクリスが互いに少し神妙な面持ちで言葉を探していると、まるでタイミングを見計らったように、酔っぱらったシリウスのひと際大きい笑い声が聞こえてきた。
詳しい話しは聞こえなかったが、声の調子から随分と酒を飲んでかなりご機嫌らしい。
「……余計な心配だったみたいだね」
「そうだな!」
困った保護者に、ハリーとクリスは顔を見合わせてクスクス笑った。
* * *
それから2人は、明日から始まる分霊箱を探す旅について話し合った。
本当ならこれ以上犠牲者が出る前に出発したいのだが、モリーが頑としてそれを許さなかった。それどころか、旅自体を中止するよう何度も何度も説得されたが、まさか首を縦に振れるわけがない。
ハリーとクリスにとって、此度の目的は打倒ヴォルデモートだけでなく、自分自身の過去と決着をつける為の旅でもあるのだ。
いつ終わるとも知れない旅なのは重々承知だが、それでも行かなくてはならない。
もちろんウィーズリー家には山ほど恩があるので、せめて結婚式くらいは出席してお祝いしたいという思いもある。
そんな賑やかな、いや、賑やかすぎる程の宴会の様子を聞きながら、ハリーは呆れ半分にため息を吐いた。
「もう11時過ぎてるのに、大人たちは元気だね」
「11時過ぎ……ってことは、あと数分でハリーも成人だな!」