第6章 【散った友情】
「ぐあっ!」
「クリス、大丈夫!?」
「あ、ああ……なんとか、な」
どうして召喚術の詠唱をしただけで弾き飛ばされるのか、意地になってもう一度精霊を召喚させようとするクリスに対し、ハーマイオニーがこんな仮説を立てた。
「待って!多分簡単に破壊されないように特殊な魔法がかけられているのよ。恐らく破壊力の高い魔法や道具、そして召喚術みたいな特別な術には、あらかじめ反発するような特別な魔法が掛けられているんだと思うわ」
「召喚術に反発か……2年生の時にサラマンダーを召喚させたら、やけに喜んではいたけど……」
「でもあの場で『服従の呪文』を使って精霊を操らせようとした時、失敗したクリスを殺そうとしていたよね?」
それはハリーの言う通りだった。
同じくあの場で不死鳥のフォークスの涙にさえ気づけなかった、未熟な若きトム・リドルが、精霊や召喚術に関して精通しているとはとても思えない。
だが結局トム・リドルがホグワーツを卒業してから数十年経った後、再び召喚術の力の強大さに目を付け、母だけを連れ去り村を焼き滅ぼしたのだった。
その数十年の間に何があったのかは、恐らく本人しか知りえぬだろう。
兎にも角にも破壊する方法が分からないうちは、ロケットは責任をもってハリーが所有することになった。
しかし、その頃からハリーの様子が段々とおかしくなってきた。
ハーマイオニーが持ってきたテントはとても広く、ゆっくりできるようなソファーやハンモックさえあった。だがハリーは率先して見張り役を買い、テントから出て1人でいるいることが多かった。
恐らく夢の中でヴォルデモートの記憶を視ているのだろう。うなされることも多くなったし、それにしょっちゅう額の傷が痛むのか、顔をしかめて唸ることが多くなった。
「クソっ!また…ぐ……」
「ハリー、大丈夫か?」
「放っといて、もう慣れっこだよ」
心配になって声をかけても、ハリーは突っぱねることが多かった。きっと心配性でおせっかいのハーマイオニーが知ったら、また面倒なことになると思っているのだろう。
だからハリーは夢の中で見たことや、傷が痛んでいるときにヴォルデモートと心を共感しているという事は、なるべく言おうとしなかった。