第6章 【散った友情】
とにかく倉庫でロンの応急処置を終えると、4人はハーマイオニーの先導で見たことのない林に『姿現し』した。
彼女曰く、子供の頃によく来た森林公園らしい。本来ならマグルだらけの街に行く予定だったのだが、ハーマイオニーもロンの怪我を見て動転してしまったんだろう。
だけどそこは人の姿こそまばらだが、静かな林と夏草の匂いがするこの清々しい公園だった。
この場所だったら、アンブリッジやディメンターが追いかけてくるとはとても思えない。だからハーマイオニーも直観的にここを選んだのかもしれない。
ハーマイオニーが持ってきた魔法のテントは、凄いの一言に尽きた。外から見るとただのテントなのに、中はおおよそ一軒家分の広さがあり、生活雑貨もほとんど揃っている。
彼女曰く、クィディッチワールドカップの時に使ったものらしい。
二段ベッドにロンを寝かせると、ロンは饒舌に尽くしがたい痛みに呻いていた。その声を聞いていると、クリスはアンブリッジの糞ババアに対して殺意がわいてきた。
だがその前に、済ませなければならないことがある。それは苦労して手に入れた『分霊箱』の破壊だ。
「インセンディオ!!」
「レダクト!!」
「インペディメンタ!!」
どうにか3人でロケットを破壊しようと呪文をかけたが、ロケットは開くどころか傷跡1つつかなかった。
一応試しに物理攻撃として岩に叩きつけてみたが、やはり傷1つ付けることも出来なかった。
そうなったらもう、この手しかない――。
「召喚術を使おう、みんな下がっててくれ」
森林公園と言う場所柄、風や土の精霊が適しているだろうと考えたクリスは、深呼吸をしてゆっくり息を整えると、精霊を召喚させようと気を集中させた。
「 悠久の空をかける 緑の君――っ? 」
クリスが精霊を召喚させようと詠唱を始めると、見えない衝撃波によって2、3メートル後方に吹き飛ばされた。
一瞬何が何だか分からず、クリスは立ち上がるともう一度精霊を召喚させようと杖を構えた。すると、またしても見えない衝撃波に吹き飛ばされ、運悪く後ろに生えていた木に背中から思いっきりぶつかってしまった。