第5章 【冒険ごっこ】
裁判が行われる部屋は、以前ダンブルドアの憂いの篩で見た父の裁判の時と同じく、階段状になっている傍聴席と、中心に固定された鎖のついた椅子があった。
それだけならまだしも、今回はディメンターが大勢辺りをうろついている。
まさかこんな所で審議を行うだなんて……。クリスはアンブリッジの、いや、今のクソみたいな政治体制にチッと舌打ちをした。
ところで、ロンはどうしたのだろう。伸び耳を使って、今日の審議を少し離れた場所から盗み聞きしているはずなのだが……。
ディメンターの影響でどこかに隠れたのか、それとも正体がばれて襲われたのだろうか?
「ハリー、ロンの姿が見当たらない!」
そう思ったら、クリスは居てもたってもいられなくなった。せっかちなクリスはロンを探そうと、透明マントを脱ごうとした。
「まって!どうするつもりなの!?計画は!?」
「悪いがハリー、計画は1人でやってくれ!私はロンを探す!!」
クリスにとってはロケットよりも、ロンの方が100倍大事だった。もしディメンター達に、どこか狭い通路なんかに追いやられ、キスされていたら……。
クリスはサッと部屋を出ると、悪い妄想ばかりが浮かぶ頭をぶんぶん振って、地下通路を進んでいった。
だが進めば進むほど空気がひんやりしてきて、その間にクリスの背後にもディメンター達が群がってきた。
クリスは体温と気力を奪われながら、必死にロンを探した。すると廊下の奥でうめき声をあげている男性が居ることに気づき、クリスは咄嗟に声をかけた。
「ロン?ロンなのか!?」
「……クリス?」
口の隙間からそっとクリスの名前を呟いた男は、間違いなくロンだった。
クリスは廊下のすみで丸くなっているロンをなんとか引っ張り立たせると、火事場の馬鹿力を発揮させロンの肩を担いだ。
「ロン、パトローナスは呼べないのか?」
「練習の時は出来たけど、ここじゃ……数が多すぎて……」
「くそっ、アンブリッジめ!」
正に万事休す。ロンを助けたい一心でここまで来たが、自分たちを取り囲むディメンターが予想以上に多すぎた。
冷気と共に生気を奪われながら、霞む視界の中、一歩ずつ足を前に出すのは予想以上に厳しいものがある。