第5章 【冒険ごっこ】
そんな時、廊下の向こう側からピンクとフリルのローブを着たガマガエ……ではなく、アンブリッジが現れた。
相変わらず趣味を疑う服装とコロンに、クリスは一気に気分が悪くなってきた。が、ここでわがままは言っていられない。
アンブリッジが執務室に入るのと同時に、クリス達もサッと部屋に入った。
ここも相変わらずピンクと可愛い猫の壁紙で埋め尽くされており、嫌でも5年生の時に受けた罰則を思い返した。その時の傷跡は今でもうっすらと手の甲に残っている。
それだけでも機嫌が悪くてイライラしているのに、さらに機嫌を悪くさせる出来事があった。
それはハリーがマントの中から、クリスの肩をつついた時だ。不思議に思ってハリーの視線の先をやると、執務室のドアに縦横無尽にぐるぐる回る青い魔法の目玉が付いていた。
間違いなく、あれはムーディ先生のものだ。
それを見たクリスは怒りが沸点に達し杖を構えたが、ハリーがそれを止めた。
反射的にハリーを見ると、驚くほど平然としている。――いや、そうではない。あれは怒りを通り越して、ある意味達観した目だった。
その証拠に書類をそろえたアンブリッジが部屋を出ようとした時、ハリーはローブの隙間から腕が見えるのもお構いなしに、ムーディ先生の魔法の目を執務室からもぎ取っていった。
それから2人は透明マントを着たままアンブリッジの後をついてエレベーターに乗った。
被告人によってどの法廷で審議されるのか分からないので、2人は黙ってアンブリッジと一緒にずっとずっと階下に進んでいった。
着いた先は、他の階と同じく木の壁と絨毯の敷かれた温かみのある場所などではなく、松明の光に照らされた薄暗い石畳のなんとも気味の悪い場所だった。
そんな場所だったからだろうか、クリスは身体が冷えてくるような気がしてきた。それに合わせて気分も落ちていき、肺が凍えるような気分がした。
そんな時、ハリーがクリスの手をギュッと握った。そしてマントの中から小声で「どうやらディメンターがいるみたいだから僕の手を握ってて」と言った。