第5章 【冒険ごっこ】
まさかこんな中途半端な所で終わるのか?そう考えた時、うす暗い石畳の廊下を、何人もの人間がバタバタと行き交った。
それとほぼ同時に、廊下の向こう側から立派に白く輝く牡鹿がディメンター達を蹴散らして行った。――間違いない、ハリーだ!!
「ハリー!!」
「2人とも無事?……じゃないと、僕が頑張った甲斐がないんだけどね」
そう言いながらハリーはSの字が入ったロケットを堂々と見せつけた。
クリスが抜けた後、ハリーは密かにアンブリッジの背後に回ると、持って来たおとり爆弾をすべて使い、騒然とする審議のどさくさに紛れ、ロケットをつかむとそのまま奪ってきたらしい。
「流石だなハリー!」
「ははっ、それじゃあハーマイオニーのところに急ごう」
計画通りハーマイオニーの所に行けば、マグルだらけの町に行ける。そこならディメンターも易々と襲ってこないだろう。そう思って3人で手を取った時だった――
「お待ち!このクソガキ共が!!」
なんとアンブリッジが鼻息荒く突進してきたではないか!!
3人が『姿現し』をしようとした瞬間、アンブリッジは咄嗟にロンの腕をとった。
ロンは無我夢中でアンブリッジの手を振りほどき、それとほぼ同時に、ゴム管を無理やりギュッと通ったような感覚があった。
うごめき、もつれる様な感覚から解放されると同時に、クリスは辺りを見回した。そこはハーマイオニーが待機している薄暗い倉庫だった。どうやら運良くアンブリッジから逃げ切れたらしい。
しかし、倉庫の隅で青年のうめき声が聞こえたかと思ったら、今度は女性の悲鳴が上がった。
「どうした!?」
「ロンが、ロンの腕がばらけてるのよ!!」
「ばらけている?」
ロンの腕を見て、クリスは「うっ」と声を上げた。なぜなら文字通りロンの腕がズタズタに切り裂かれ、まさに肉片と言っても過剰ではないくらい『ばらけて』いたからだ。
かろうじて腕の形を成してことが不幸中の幸いだったであろう傷口を見て、クリスは身震いした。
そして自分たちが描いていたものが、ただの「冒険ごっこ」だという事を痛感させられた出来事だった。