第5章 【冒険ごっこ】
そして遂に決行日がやって来ると、ハリーとロンとクリスは、3人一緒に魔法省職員が通りかかるのを待った。この1週間でどの職員がどこを通って魔法省に行くのかは、バッチリリサーチしている。
そしてようやくやってきた魔法省の職員に失神呪文をかけ、髪の毛1本と来ていたローブを拝借した。
「ここまでは良し」
「それじゃあ、僕らはアンブリッジの執務室に向かうから」
「僕は裁判所に行くよ」
そう言って二手に別れようとした時、寸前の所で1つのミスに気付いた。それは――……
「……クリス、君、その召喚の杖、持っていくつもり?」
そう、クリスのトレードマークでもある背よりも高い召喚の杖を持っている姿が、当たり前になり過ぎていて、作戦実行寸前まですっかり見落としていた。
ここから先は隠密行動が必須の場所だ。こんな杖を悠長にコツコツ突きながら行動できるわけがない。
「――よし、今日の作戦は中止にしよう!」
「…………クリス?もう1度言ってみて?」
「ノッ!ノーバートの時と同じように背中に括りつけて下さい!!」
お怒りんぼのハーマイオニーに怒られるのには慣れたが、ハリーが時折見せる、口元は笑っているのに目だけが座っている状態のほうがよっぽど怖い。
そして宣言通り、ハリーがクリスの背中にしっかりと召喚の杖を巻き付けた。
「よしっ……じゃあ、今度こそアンブリッジの執務室に行こう」
「僕も、2人の幸運を祈ってるよ」
互いに健闘を祈ると、3人は公衆トイレに入った。どうも最近得た情報からすると、省に務めている人はみんな駅の公衆トイレを使って通勤しているらしい。
どうゆう仕組みになっているかは知らないが、どうやらこれも『ポッター対策』らしかった。
透明マントをかぶったクリスとハリーは、クリス誘導のもと安全にアンブリッジの執務室へたどり着いた。この時間はまだ出勤前のはずだが、念には念を入れて少し早く到着していた。
透明マントの性能は信じているが、実際敵のアジトで隠密行動をとるというのは緊張する。