第5章 【冒険ごっこ】
「助っ人って言っても……」
これ以上クリス達4人がこのグリモールド・プレイスに居ることがばれたらどうなることか。
シリウスやルーピン先生は納得してくれたが、もしモリ―おばさんの耳に入ったら、絶対に旅をやめさせようとするはずだ。
だからどうにかこちらの事情を理解しつつ、手助けしてくれる人間がいれば良いのだが……そんな都合の良い相手なんているはずがない。そう思っていたら、突如ハリーが叫んだ。
「そうだ、ドビー!……じゃなかった、クリーチャーに頼めばいいんだ!!」
確かにクリーチャーならクリス達の事情も諸々知り尽くしているし、いざとなれば魔法も使える。
しかし今のままでは裏切られる可能性も十分ある。どうにかクリーチャーに言うことを聞かせられる方法があればいいのだが……。
するとハリーが首から下げていた偽物のスリザリンのロケットを外し、クリーチャーが寝床にしているボイラー室の扉を開けた。
中は相変わらず食べかすや干からびたネズミの死体と思しきものと一緒に、汚い毛布が丸められており、クリーチャーはその毛布にくるまっていた。
ハリーは声をかけるよりも早く、ロケットをクリーチャーの目の前に突きつけた。
「もし僕らに協力してマンダンガスを捕まえて来てくれたら、このロケットを渡す。でももしまた命令を曲解して僕らを裏切れば、どうなるかわかってるね?」
「このロケットを……レギュラス坊ちゃまの最期の形見を、クリーチャーにくれるのですか?」
喜びのあまり、シワシワで陰気臭かったクリーチャーの顔が光り輝き、目から星が100個くらい飛び出したように見えた。
一応助っ人兼お目付け役として、はるばるホグワーツからドビーにも来てもらった。
ドビーはハリーの役に立てるのが嬉しそうで、大きな目をランランと輝かせて、クリーチャーと一緒に屋敷から姿を消した。その姿をみて、クリスはふと感慨にふけった。
「……屋敷しもべの幸せ、か」
「何のこと?」
「いや、2匹とも楽しそうだなと思って」
目をランランと光らせて任務にあたったその姿と、チャンドラーの最期を思い出し、クリスは『反吐』について少し考えを改めようと思ったのであった。