第4章 【果てしなく続く青空】
ルーピン先生は「先生」として、と言うより不死鳥の騎士団の団員としてクリス達4人を見据えた。
その顔はいつもの優しい柔和な顔でなく、厳しい騎士団員としての顔だ。それからシリウスにも言われた通り、此処がどれほど敵にとって好都合な場所なのかを説教された。
RABのロケット紛失情報もあわせて、朝食は楽しいものとはほど遠かった。
そして食事が終わるとルーピン先生からも、クリス達が何をしようとしているのかを聞いてきた。
「すみませんが先生、あまり多くの人に教えたくないんです」
「シリウスが良くて、私がダメな理由は?」
「そういう意味ではなく、これはダンブルドア校長から課された旅なんです」
「では、その旅に私も同行しても構わないかい?」
「えっ……ええっ!?」
まさかの発言に、その場にいた全員が固まった。
確かにこれはハリーやクリスにとって人生をかけた旅であり、傍から見たらロンとハーマイオニーはただの同行者に過ぎない。
だからそこにルーピン先生が同行者として加わっても、何も不思議じゃない。不思議ではないが……何か例えようのない違和感が辺りを包んだ。
「でも先生、トンクスはどうなるの?」
部屋に張り巡らされていた緊張を破ったのはハーマイオニーだった。
そうだ、先生は不死鳥の騎士団の団員でもあるが、トンクスの夫でもあるのだ。
昨日式を挙げたばかりなのに、その翌日に旅立つなんて何かがおかしい。訝しむクリス達を前に、先生はこう告げた。
「トンクスは実家にいる。私といるよりも安全だろう」
「それじゃあ、今2人は一緒に暮らしてないの?」
「私は狼人間として諜報活動をしているから、一緒にいることで逆に彼女を危険にさらしかねない。けれど旅に出たら、彼女を安全な場所に居させられる」
「……本当にそんな事を思っているのか、リーマス?」
ギラギラしていたシリウスの瞳が、今度は冷たい灰色に変わっていた。シリウスとルーピン先生の間に、冷たい空気が漂っている。