第4章 【果てしなく続く青空】
だがそこで計画がひっくり返った。なぜならばクリーチャーが“魔法使いとは違う魔法”を使ってこのグリモールド・プレイスに戻って来たからだった。
その後、自分たちの行いに沸々と恐怖を覚え始めたレギュラスが、ヴォルデモートを裏切る形で、再びクリーチャーを連れて本物の分霊箱と偽物の分霊箱を取り換えたらしい。
そしてその時クリーチャーに呪いの水を飲ませるのではなく、自らが水盆の水を飲み、そのまま――……。
「……なるほどな」
その時のシリウスの言い方には、タバコをふかす様な少し細いため息と共に、喉の奥から燻るような、そんな言葉だけでは言い表せない神妙さがあった。
本当はまだ聞き足りない部分も沢山あったが、実の兄であるシリウスの一言に胸が詰まって、結局この話はここで終わりとなった。
「それで結局、本物のロケットはどこにあるんだ?」
「ぬ……すま……した」
「なんだと?」
「盗まれました!あのマンダンガス・フレッチャーとかいうコソ泥に!!」
よりによって話しの要であるロケットを盗まれた。
そのお仕置きが怖かったのか、クリーチャーは急いで廊下の隅まで走り、身をかがめてぶるぶる震えていた。
RABのロケットについてここまで近づいたのに、まさかこんな形で邪魔が入るとは……。シリウス含め、5人は大きくため息を吐いた。
「マンダンガスが我が家の金品を盗んでいるのは知っていたが、まさかよりによってスリザリンのロケットも盗んでいたとは……」
「どうするの、シリウス?」
「私は騎士団の任務があるから、これ以上は此処にいられない。だが4人とも、私が戻るまで決してこの屋敷を離れないでくれ」
「どうして?シリウスが駄目なら僕たちが探さなきゃ」
「ハリー、昨日も言ったが計画無き正義はただの蛮勇だ。それでなくとも、最近は『人さらい』なんて言う輩も出てきている」
「人さらい?」
「ああ、報奨金をかけてマグル生まれの魔法使いや、マグルに手を貸す魔法使いたちを捕まえているらしい。捕まえた後は……言わないほうが良いだろう」
そんな話をしていたら、シリウスの目が急に殺気立った。それと同時に、ポンッとルーピン先生が玄関先に現れたのだった。
「遅かったな、リーマス」
「君の情報が本当かどうか探っていたんだ。まさか本当にこんな所を選んだなんて」
